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これまでの西洋哲学史では文化についての知は常に周辺に扱われ,その本流は言語,論理,理性といったロゴスに重きをおき,人間の多様な営みである文化を捨象することを原則とした脱文化・超文化的なものであった。
「文化哲学」は,抽象化された一般概念としての文化ではなく,人間の生きる現場である「文化的事実」を頼りに,多様でつかみどころがなく,いまやそれ自体が問題となった「文化」に分け入っていく探求である。
20世紀初頭,科学技術の進歩により文明が極まり第一次世界大戦を象徴として人間がつくり出したものがいまや人間を脅かす,文化の危機という認識が広く共有されていた。ヨーロッパ文化の危機への対処としてジンメルによりキーワード「文化の悲劇」が提示され,カッシーラーがそれを批判することで「生の哲学」から自立した現代の「文化哲学」の道を拓いた。
さらに著者は「批判」「制作・作品」「迂回」という文化哲学の中心概念を示し,その体系・理論を展開する。
本書は,テクノロジーによる進歩の先に見るポスト・ヒューマン的世界観や資本主義システムを推し進める加速主義が広がりを見せる時代に,あえて立ち止まり,別の可能性を探求するプロジェクト,現代文化哲学のマニフェストである。
第1章 世界の人間化/人間化した世界
第1節 文化にまつわる様々な概念
第2節 文化哲学の挑戦
第3節 ふたりのパイオニア
第2章 文化哲学の前史
第1節 ヴィーコと文明世界の発見
第2節 ルソーと人間の自己創造
第3節 シラーと野蛮からの救出
第3章 文化哲学の歴史
第1節 科学的世界観の勝利
第2節 世界大戦による破滅と「文化論的転回」
第3節 文化のドラマ
第4章 文化哲学への要求
第1節 文化批判の両義性
第2節 文化的事実の理論について
第3節 迂回現象としての文化
解説
人名索引
事項索引
20世紀初頭、科学技術の進歩により文明が極まり第一次世界大戦を象徴として人間がつくり出したものがいまや人間を脅かす、文化の危機という認識が広く共有されていた。ヨーロッパ文化の危機への対処としてジンメルによりキーワード「文化の悲劇」が提示され、カッシーラーがそれを批判することで「生の哲学」から自立した現代の「文化哲学」の道を拓いた。さらに著者は「批判」「制作・作品」「迂回」という文化哲学の中心概念を示し、その体系・理論を展開する。本書は、テクノロジーによる進歩の先に見るポスト・ヒューマン的世界観や資本主義システムを推し進める加速主義が広がりを見せる時代に、あえて立ち止まり、別の可能性を探求するプロジェクト、現代文化哲学のマニフェストである。
第1章 世界の人間化/人間化した世界(文化にまつわる様々な概念/文化哲学の挑戦/ふたりのパイオニア)/第2章 文化哲学の前史(ヴィーコと文明世界の発見/ルソーと人間の自己創造/シラーと野蛮からの救出)/第3章 文化哲学の歴史(科学的世界観の勝利/世界大戦による破滅と「文化論的転回」/文化のドラマ)/第4章 文化哲学への要求(文化批判の両義性/文化的事実の理論について/迂回現象としての文化)
下田和宣(シモダカズノブ)
1981年静岡県生まれ(旧姓:石川)。学習院大学、京都大学大学院を経て、ドイツ留学(ボッフム大学、キール大学)。現在、成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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